2022年3月にリリースされ、現在さまざまな企業とともに実証実験を行っている「駅と街のガイドブックアプリ ekinote(エキノート)」。2023年から実証実験に参加する江ノ島電鉄株式会社 (以下、江ノ電)の大石綜一郎さんに、ekinoteを使って感じたこと、ビジネスアカウントの運用効果、アプリへの期待などについて語っていただきました。
近隣にある鎌倉市観光協会様が先にekinoteを導入していて、ご紹介を受けたのがきっかけです。最初に話を聞いたときには、鉄道会社全体ではなくひとつひとつの駅ごとに情報を発信するという視点がとても新鮮でした。後日、三菱電機さんと面談した際にびっくりしたのが、すでに最寄り駅の周辺情報がそれなりに登録されていたことです。アプリを開けば、GPS機能によって、ユーザーが自ら調べずとも周辺情報にリーチできる。これは検索サイトや情報サイトとは一線を画します。「まったく新しいアプリが登場したな」が第一印象でした。
そうなんです。弊社(以降、江ノ電と記載)の15駅すべての基本情報と各駅の周辺情報が登録されていました。すでに一定数の情報があるなら、江ノ電としても気楽に参画できます。15駅すべてに対してゼロからコンテンツを準備する必要がないならば、と肩の力が抜けました。社員数の限られている江ノ電にとっては、無理のないペースで運用できることも大きなポイントです。
理由はふたつあります。ひとつ目は、江ノ電がちょうど主体的に情報を発信できる場所を求めていたことです。ありがたいことに江ノ電はメディアで取り上げられることも多く、受け身の広報活動はある程度できていました。でも、「江ノ電が伝えたい情報を伝えられる場所」は限られていたのです。さらには、コロナ禍にX(旧Twitter)を使い始めてみて、フォロワーと一緒に地域を盛り上げていく発信の効果を感じていたので、もっと情報発信の場を増やすべきだと思っていました。
もうひとつは、江ノ電の観光情報サイトへのタッチポイントを増やしたかったからです。以前から小田急電鉄さんと共同で「江の島・鎌倉ナビ」を運営しており、ここへの流入を増やす仕掛けを探していました。ekinoteのビジネスアカウントではリンクシェア(URL共有)をスマホ1台で手軽にできるので、ekinote経由で「江の島・鎌倉ナビ」を見てもらえれば、誘客に結び付けられる。そこに期待しました。
一番多いのは、ekinoteにある各駅の「エキガタリ」というコーナーに、先ほどお話しした「江の島・鎌倉ナビ」のリンクシェアを行うことです。「江の島・鎌倉ナビ」に掲載している店舗や観光名所を各駅に紐づけられるので、利用される方にも便利なはずです。ほかですと、ekinoteに各駅周辺の店舗や観光名所を登録しています。これらは、「江の島・鎌倉ナビ」の担当者とも確認をしながら駅ごとに特化した内容とさせていただきました。
最近は「エキガタリ」にミニブログ記事の投稿(「写真と文章で投稿」)も始めました。今後は投稿数の増加に合わせて、メジャーなポイントから、新しいスポットを紹介する機会を増やしていく予定です。沿線を自由に散策できる楽しいスポットを増やしていくことで、駅から始まる様々なストーリーが楽しめる環境を目指していきたいと考えています。丁度、新たなフォトスポットを探しているところです。
これら以外ですと、先日は、姉妹提携している京福電気鉄道(通称、嵐電)さんの嵐山駅の「エキガタリ」へ、姉妹提携の記念碑の写真を投稿しました。現時点ではekinote上でのユーザー間のやり取りは限定的ですが、アプリ内での交流は個人ユーザーにも喜ばれますし、投稿を活性化させるのに有効だと思います。XやInstagramなど、他のSNSとの役割分担もはかりながら、どんな活用方法が個人ユーザーの皆さんに刺さるのかを、いろいろ探っているところです。
個人ユーザーが記事を保存できる「マイノート」という機能に注目しています。何かを投稿するとそれを気に入ってくれた方がポチッと保存ボタンを押してくれるので、今後、その数が増えてくるとユーザーニーズやekinoteを活用する方向性が見えてくる予感がします。
「マイノート」には自宅最寄り駅や職場最寄り駅の登録機能があり、年齢層や職業などのユーザーデータも取得できます。「どこから、どんな方が、どの駅に来ているのか、どんなことに興味があるのか」を可視化できるツールを持っていることは、マーケティングにおいてとても重要です。そういった観点からも、今後、我々の強い味方になってくれることを期待しています。
まずはekinoteによって、お客様の旅の行程の引き出しを増やしたいですね。江ノ電のお客様は「ここに行きたい!」という想いが比較的強く、メインの行先は決まっていることがほとんど。それがekinote効果で、目的地の周りに点在するお店や商品にもスポットライトが当たり、定番以外も話題になってほしい。「大仏を見に行こう」だけではなく「あの駅にはあのお店があって、こっちにはこんなお土産屋もあるらしい。ついでに、ここにも行こう」という会話を、ekinoteを通してしてもらいたいですよね。
やはり江ノ電は地域の方のご理解があってこそ成り立つ会社です。地域の盛り上がりとは一心同体なので、ekinoteを通して地域経済が活性化していくのが理想です。ekinoteから地域を元気にしていけたらと考えています。
「こんな機能があるといいな」や「こんなことできないの?」といったことを自由に相談しています。担当の方も、常に私たちの意見に前のめりで耳を傾けてくださるので、言いたいことを遠慮なく言える関係性です。
たとえば、UI・UXを強化するアイデアとして、「地図上に自分の位置を投影する機能があって、駅周辺のスポット情報も地図上にポップアップしたら面白いな」とか。駅が全国約9,100カ所も登録されているので、スタンプラリーのようにチェックしていける機能があれば楽しそう、とか(※江ノ電スタンプラリーは2024年春夏以降の開催を検討中)。他のSNSなどとは違う「ekinoteならではの楽しさ」をどれだけ増やせるか、ekinoteを運用する立場からの提案をよくします。また、今「エキガタリ」のページは情報をスクロールして見るのですが、「サムネイルの一覧の方が見やすいです」など、個人ユーザーとしての意見も伝えていますね。
三菱電機さん側からも「テレビ番組で共同プロモーションをしませんか」とか「イベントで投稿キャンペーンをしたい」など、いろいろなご提案をいただくこともあり、常に「どうやってekinoteを盛り上げていこうか」を一緒に考えています。最近では、「Android版アプリが完成した」「スタンプラリー機能が実装できた」などと大きなニュースが多く、その成長スピードにわくわくするばかり。打ち合わせのたびに新ネタを持ち寄りますが、「次はどんな新機能が登場するのかな」と毎回が楽しみです。
昨年は、ekinoteの認知度を上げるために、江ノ電が毎年開催している鉄道イベント「タンコロまつり」に、三菱電機さんにも出展してもらいました。当日は、アプリの登録や投稿をしてくれた方にノベルティを配布するキャンペーンを実施したんです。その場でアカウントを作ってもらい、投稿方法も教えるので、スマホ教室みたいになっちゃったんですけど(笑)、2日間で200人くらいが投稿してくれました。今でも時々投稿して、活用してくださるユーザーさんが大勢います。
ekinoteを実際に使ってみて感じるのは、我々のような小規模の鉄道会社はもちろん、大規模の鉄道会社さんでも、活用しがいがありそうだなということです。鉄道会社は常に沿線地域とともに成長していきたいと考えるものですが、それを叶えるのにekinoteは有効な手段になると思います。大規模鉄道会社さんがいきなり全駅でekinoteを運用するのは難しいかもしれませんが、ターミナルステーション限定で使う、あるいは一部区間でだけ使ってみてもいいはず。それをきっかけに、沿線地域を盛り上げていく方法のヒントが見つかると思います。
今後はekinoteの活用がどんどん広がり、多くの投稿、情報が集まって、ekinoteが活性化していくことを願っています。私たちもパートナーとして、ekinoteから「元気な地域」を共創していきたいですね。
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